I will die tomorrow

「私・明日・死ぬから」
    Dさんの言葉

日本ナラティブ音楽療法協会 理事長 大湊幸秀

 私(大湊)の「初!音楽療法」(1999年5月)に1回目から、毎回参加して頂いていた「Dさん(女性)」の話しです。

 そこの施設は100床で、週1回の音楽療法には、だいたい50〜70名ほどの方が参加して頂いていました。

 Dさんはいつも1番最初に会場へ来て、2列目の真ん中くらいに車イスで参加されていました。Dさんが休まれた記憶はありません。(数回はあった?)

 いつもあまり喋らず、表情もあまり変わりませんでしたが、気持ちを外に出していなく、自身の中で楽しんでいる感じでした。

 音楽療法の時も歌も小さな声、または心の中で歌っているようでした。20年前ですので最初に参加されたころは、Dさん70才前半くらいだったと思います。

 

 最初の頃は終わると「次は1週間後だね、長いね」などと話してくれていましたが、おそらくアルツハイマーで(外部の人間には教えて頂けないので推測です)、初・音楽療法参加から10年位経った頃には、音楽療法終わるのが14:30でしたが「次は、ご飯だね」に変わっていきました。

 その頃です。ある日の音楽療法に、家族の方がDさんの横に座り参加されました。

 終わった後、その家族の方が私に「Dの娘です。母は、もう私や家族のことはわかりません。でも、居室などでの話しの中にいつも「大湊先生」が何度も出てくるのです。 それで今日、音楽療法に参加しました」

「なぜ出てくるのか良く、わかりました」と嬉しい言葉を頂きました。

 

 私は音楽療法を始める前に、参加されるみなさんの所を回り(認知症の方々には必ず)、一人一人の方と手を取って話しをするようにしています。世間話から、いろいろな事を話してくれます。私にとっても、嬉しく・楽しい時間です。

 皆さんに心配して頂いたり、また励まして頂いたりしていただく事も多々あります。

 

 4年ほど前も、いつもの通り皆さんの所を回り、車イスのDさんの所に行きました。

 いつものように跪き「こんにちは~~!」「調子はどうですか?」と話しかけましたら、いつもは「うん、うん」とチョッと下向き加減で返事をするのですが、その日は頭を上げ、真っ直ぐ私の目を見て普通の声で「私、明日、死ぬから」と言ったのです。

 驚かそうとか冗談とか、ではなく淡々と「私、明日、死ぬから」と言ったのです。もともと冗談を言う人ではなく、またあまりにも淡々と話してましたので「えっ!」と驚きました。

「そんなこと、ないですヨ」などと話したと思いますが、動揺したのか良く覚えていません。

 

 そして翌週、Dさんは参加されませんでした。

 大変気になりましたのでスタッフの方に聞きましたら、チョッと具合が悪く居室で寝ているとのこと。

 少々ホッとしました。

 しかし次の週もDさんは参加されませんでした。病院に移ったとのことです。

 そして「私、明日、死ぬから」と言った1ヶ月後、病院で亡くなりました。

 

 「私、明日、死ぬから」と私に言ったときは、見た目も容体も良く、私にはいつもの「D」さんにしか見えませんでした。

 思うに、私(大湊)と会えるのが、その日が最後だったので「私、死ぬから」と「私に知らせたかった」のだと思います。そして「今まで「約14年間」、ありがとう」「さようなら」と言って下さったのだと思います。

 ず〜っと気になっていましたが、そのことに私が気がつくまで4年かかってしまいました。今でも、あの時の場面や、顔の表情、口調を思い出します。

 

 いつまでも、きっと私の事を見守ってくれていると思います。Dさん、私がそちらへ行きましたら、皆さんと一緒にまた楽しく歌い・笑いましょう。

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