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音楽療法士

音楽心理士

大湊 幸秀

お お み な と ゆ き ひで 

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1985年「ソロ・コンサート」

世界的なフォトグラファー 松本 新 氏:撮影

「音楽療法士へ」

 

 1999年3月に老人保健施設より「仕事として音楽療法を行ってほしい」と依頼されるという、非常にラッキーなスタートでありましたが、当時の私にとっては「困惑」でしかありませんでした。

 その3年前の1996年から音楽療法の勉強していた私でしたが、諸先輩方の音楽療法に接して「私には無理、出来ない」と、実践研修ではいつも後ろの席に座り、影のような存在として参加していました。

 その私に施設での音楽療法依頼が来たのです。

 「困った、どうしよう」という気持ちが一番先によぎりました。

 

 自営業は「今、目の前の仕事を逃したら次はない」「今度とお化けに会ったことがない」(次回はちゃんとしたギャラを払うから、今回はこの金額でなどの話で、この次が来たことがない例え話)という業界です。

 

 当時は、ピアノやエレクトーン、ドラム、コンピュータミュージックなどの講師をしながら、コマーシャルの仕事(作曲など)をしていて「音楽が心におよぼす力」などに興味があり音楽療法研修に参加していました。

 仕事として来た話はすべて受けてきたのですが、音楽療法の仕事は迷いました。

 

 まず高齢者の方と接することが殆どなく、何を話して良いのか、何が喜ばれるのか、認知症(当時は痴呆)の勉強はしていたが実際に認知症の方に接したことがないなど、高齢者の方々の実態がわからない。

 高齢者用の施設やディサービスがあること自体、音楽療法の勉強をして初めて知った次第です。

 そして音楽は芸術でなくてはならないなどと思っていたので、懐メロや歌謡曲、演歌など知らないし興味もありませんでした。(実際は違ったのですが、当時は芸術家を気取っていました)

 

 しかし悩んだ末(今思えば贅沢な悩みです)、仕事として受けることにしました。

=当時の私=

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 4月からすぐに音楽療法を行ってほしいと施設側から言われましたが、どんなプログラムで、どのようなセッションをしたらよいのかイメージ出来ません。

 そこで施設の方に1ヶ月待ってもらい、弁当持参で施設に通いました。高齢者の方々の実態調査です。

 午前10~11時位に施設に行き、施設で高齢者の方々がどのようなことを行っているのか見学し、昼みなさんと一緒のテーブルで昼食(私は弁当)しながら話をして笑って帰ることを、約1ヶ月おこないました。

 しかし私が来るのを高齢者の方々は不思議だったらしく、あとすこしで1ヶ月という時、昼食時向い側に座っていた方から「あなた、ここに(施設)入ったの?」と不思議そうな顔で言われたのを懐かしく思い出します。

 

 1999年5月11日(金)いよいよ施設での音楽療法が始まりました。入所されている方、通所されている方で希望者だけですので12~13名くらいだったと思います。

 入所されている方は、音楽療法か作業療法かどちらか希望の方に参加でしたので、向こうでは作業療法を行っています。

 その時のプログラムを見ますと、歌は全部で10曲、あとはクイズやリズム運動などで、今のプログラムとは全然違いますが我ながら良いプログラムで、今一度使ってみようかなと思ってしまいます。

 その日のセッションは大変盛り上がり(みなさんが盛り上げてくれたと思いますが)、喜んで頂きました。

 

 終わっての帰り道、施設の横を歩いていると窓が開き「さようなら~! また来てネ! 楽しみにしているからネ!」と数名の80~90代の方々が、女学生のように窓から身を乗り出して声をかけてくれ、胸が熱くなったのを覚えています。

 

 家に帰って思いました「これは私の天職だ! この音楽療法の仕事のために、今までの人生があったのだ!」と、それまでの「私には無理、出来ない」という思いはどこかに飛んでいってしまったのです。

 翌週から作業療法に参加していた方々も徐々に音楽療法に参加し始めたため人数も多くなりましたので(作業療法しながら皆さん歌っていたそうです)、翌月から入所されている方々と、通所されている方々とを分けて行いたいと施設側に申し入れましたら「そうしましょう」と、すぐ6月から週2回行うこととなりました。

 

=この原稿を寄稿した頃の私=

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=現在の私=

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私の「勲章」

 老健のディサービスを利用されていた、92歳の男性(元校長・茸博士)から頂いた感謝状です。一緒に美味しいお酒も頂きました。

 いつも毎回感激していただき「年寄りをこんなに楽しませてくれて、ありがとう」と言って頂いていました。

 いまは「天国」から活動を見ていただいていると思います。頑張らなくてはと思う毎日です。

 この方だけでなく、いろいろな方々からも「嬉しい言葉」をかけていただいたり、手紙をいただいたりしています。

 わたしもその内「天国」に行けましたら、みなさんとまた楽しい時間を持ちたいと思っています。

 みなさんに「感謝」です。 もちろん、今の皆さん方にも「感謝!」

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