umehara
mari
梅原 マリ
熊本県熊本市在住
3級音楽療法士
放課後等デイサービス
事務所勤務
「ナラティブ音楽療法を用いた
自閉症児のグループ活動」目的と効果
【要旨】
音楽療法を多くの困難さを抱える自閉症児に行い、期待できる効果は様々である。
本報告では、自閉症児の個別性に合わせた音楽療法プログラムを用いたグループ活動における目的と対象児の効果を記述する。
【目的】
私が勤務している法人では、放課後等デイサービスという、障害のある学童期児童が授業終了後や学校休校日に通う通所施設を運営している。
放課後等デイサービスでは、各児童に合った支援目標と内容を記載した個別支援計画を作成し、その個別支援計画通りの支援を行う。成長や生物学的要因、環境要因や心理的要因等で児童は日々変化する。その変化に合わせて個別支援計画も変化していかなければならない。
音楽療法プログラムを用いたグループ活動を行う目的は、本人に合った計画を立案し適切な支援を行い続けることである。
【目標】
ナラティブ音楽療法プログラムを用いたグループ活動における目標は、各児童の発達を促すことである。ナラティブ音楽療法では様々な楽器や身体の動きを使い、様々な刺激を児童に提供できる為、楽器の音やセラピストとの関わりが優れた媒体になる。
一つの事例として、A児の音楽療法プログラムを用いたグループ活動における目的と対象児の効果を挙げる。
A児は、注目することに困難さがあり、多動性がある自閉スペクトラム症の男児である。他児と同じ活動を並行して行うことはできてもグループ活動への参加が難しく、集中が長く続かず他者との関わりが少ない。A児がグループ活動に参加できるように、A児の好きな曲を使用した合奏やダンス、ピアノの音に合わせて他児や本人の名前を呼び、返事を促すプログラムを取り入れた。
【注意点】
自閉症児を対象に音楽療法プログラムを作成する上で、特に私は2つの点に注意している。
1つ目はナラティブ音楽療法の基礎―Ⅱコースでも触れられているが、注目することにも困難さがあり、多動性もあるA児の様な児童に対しセラピストが児童の集中が途切れない様な工夫をし、音楽療法を実践しすること。
2つ目は自閉症児は、感情やモチベーションの基礎となる内部感覚(疲労、緊張、空腹、渇き、眠気等)にも困難さを抱えている為、その点も考慮したプログラムを作成することである。
【考察】
A児は音楽療法開始直後は活動する部屋への入室もままならず、別の部屋で別の活動を行っていた。しかし回数を重ねるにつれ、徐々に活動に参加できるようになっていった。
まず、別の部屋に居ても音楽療法で使用する曲や楽器の音色に耳を傾ける様な仕草が見られるようになった。その後、入室できるようになり、音楽療法開始から約1カ月後には、数分間他児と同じ活動を行うことができるようになったのである。
一時も他児と活動を共有できなかったA児が、数分間他児と同じ活動を行うことができるようになった。
また、音楽療法以外のグループ活動にも離席することなく参加出来るようになったのである。
この事から、ナラティブ音楽療法プログラムを用いたグループ活動を行い、A児の他者との関わりを促すことができたと考える事ができる。
音楽という非言語コミュニケーションを使い、本人や他児の名前の認知すること、注目すること、共有することを学ぶことができた。
【おわりに】
私は、ナラティブ音楽療法を実践することにより、多様な効果が期待できるグループ活動を行うことが可能になりました。今後もナラティブ音楽療法を実践し、適切な支援を行い続けていきたいと考えています
また、当協会様には昨年の熊本地震の際に、早々に温情あふれるお心遣いで楽器を頂戴し、深謝しております。重ねてお礼申し上げます。