私と音楽

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   佐治 沙八香  2020年2月28日・掲載

 音楽は、私にとって呼吸であり、魂であり、自己表現である。音楽ほど素直なものはあるだろうか。
 人間には、人に何かを伝える手段として、言葉、文字、表情、態度などが存在する。一体いつから、私たちは沢山の表現のツールを持ったのか。


 「文字」を持たない民族は多いが、歌のない民族はいないと言われている。文字の歴史は高々数千年と言われているが、歌の歴史は数万年。人類にとっては、文字よりも歌の方が、より普遍性の高い文化である。
 しかし私たちは、言葉や、文字等、歌以外の伝える手段を手に入れ、より発言や、気持ちを発信することが簡単になった。インターネットの世界でも沢山の言葉が飛び交い、社会も文字や言葉でいっぱいだ。
 

 嬉しい時。人々は喜びを歌や踊りにしてきた。深い悲しみに包まれた日も、腹が立つ日も。石を鳴らし、木を叩き、私たちの先祖たちは、歌や踊り溢れるリズム。音楽で感情を表していた。おそらくそこに嘘や偽りは無かったはずだ。
言葉や文字が出来たことは私たちを豊かにした代償として、本音、真実を不透明なものにかえてしまったのではないかと思ってならない。

  顔で笑い心で泣く人々。思っていないことを、平気で「そう思います。」と同調する人々。
そして、万国共通だったはずの表現手段が国によって異なる言語となり、共通ではなくなってしまった。

 

 私は以前海外ボランティアをしながら、海外旅行をした。英語も伝わらず言葉でのコミュニケーションを図ることは困難だった。そこに一台の足踏みオルガンがあり、私は「さくらさくら」を弾いた。

 周りにいた子ども達がわーっとオルガンの周りに集まった。演奏が終わると、さっきまで(この人は誰だろう)(なにをしてるのだろう)と不安そうな顔をしていたにも関わらず拍手をしたり、(もう一度弾いて)と言わんばかりの表現をしたり、緊張していた顔が和らいでいたのである。


 言語は世界共通ではない。
 しかし音楽は世界共通であり、音楽により心が動く事も、楽しみ方も世界共通だったのである。もちろん「ド」は「ド」であると共に。
 そんな当たり前のことを、私はこの経験で初めて気づいたのである。


 例え聴いたことのない音楽であっても美しいものは美しい。

 国境をこえて、同じ気持ちにさせてくれる。
 そこには正解も不正解も存在しないのだ。


  私はこの経験をするまで、幼少期から続けてきたピアノを誇りに思った事もなく、音楽は好きだ。と思いながらも、ピアノが弾ける=技術の高さだと思っていた。
 しかし、そんな思いが全てひっくり返るようだった。
 上手さは決して技術ではなく、素直な思いだったのである。言葉を越える気持ち。嘘、偽りのない想い。それが溢れた時、人々の心を動かせる音を出せるのではないだろうか。

 

 音には、裏など存在せず、その人を真っ直ぐ表すものとなる。言葉や文字を越えた、意思の伝達。表現のツールとなる。人間は元々言葉を持っていなかった。言葉をもつことで、誤解や疑いも生まれた。それにきづいてから、より私は音楽に素晴らしい力がある事に気付いたのである。

 正解。不正解。白。黒。その狭間には本来の豊かさがあるのではないだろうか。決してグレーでは無く、その人が感じ取る自分の解釈。私は音楽にそれを多く感じた。人それぞれ受け取り方が違うからこそ音楽には面白さと色や味が生まれ、それに気づけた自分を誇りに思えたのである。

 

 ナラティブ音楽療法での、利用者個々の人生の物語であり、様々な人生の物語に心を寄せ、人生の主役はあなたであり、あなたが主人公である。という学びに私はすごく共感したのである。
 

 無理に励ます音楽では、言葉と何も変わらない。押し付けがましい音楽ならば、無理矢理泣かせる為の音楽ならば…。とても明るい楽曲であっても、その人の心に寄り添っていなければ、苦しくてたまらない。全ては、目の前にいる人の為に。その方の人生の一部になれるような音楽療法士になりたいと共に、溢れる表現のツールから、真実を伝え、目の前にいる方に魂から訴えたいと思ったのである。

それが私の音楽である。

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