私と音楽

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   加藤 英美花  2019年9月28日・掲載

 私にとって「音楽」とは、誰かと分かち合った時に、とんでもないパワーを発揮する魔法のようなものである。

 私はピアノを弾く母と姉に憧れて、4歳からピアノを始めた。練習は特に好きなわけではなかったが、レッスンで先生に褒められること、発表会を両親が欠かさず見に来て演奏の良かった点を言ってくれること、学校で披露すると先生や友達に「すごい」と言われることが嬉しくて続けていた。中学校で吹奏楽部に入部し、多人数で合奏をする楽しさを知った。

 合唱コンクールでは3年間連続でピアノ伴奏をし、3回とも最優秀賞をもらったことで、自分が主役ではなく、歌を盛り立てたり導いたりする役割が自分にとってはとても心地良いことに気付いた。高校では合唱部に所属し、多人数でのコーラスや伴奏の楽しさにますます目覚めていった。

 そんな中で、私は自然と音楽の教師を目指すようになった。「音楽で得られる感動を分かち合いたい」「できるだけたくさんの子どもたちに音楽の素晴らしさを伝えたい」という気持ちからだった。音楽大学に入学し、ピアノと声楽のレッスンや、仲間との演奏会、教職の勉学に励んだ。

 念願叶って教員採用試験に中学音楽の枠で合格し、大学卒業と共に、公立学校に新任教師として赴任することになった。

 しかし、赴任先は希望していた中学校ではなく、特別支援学校であった。音楽を伝える情熱に燃えていた私は肩透かしをくらったような心境になったが、いざ働き始めると、障害を持った子どもたちはとても純粋で個性的で、愛すべき存在だった。

 私は特に、週2回しかない音楽の授業に力を注いだ。大学時代から学び準備していた題材はほとんど扱えなかったが、音楽への認識と幅が広がったし、なにより中学校と違い教科書が一切ない中で、想像力と創造力をフルに働かせて授業を組み立てることは楽しかった。子どもたちも毎回の音楽の授業を楽しみにしてくれ、思いもよらない力を見せてくれる瞬間は、私も同僚の先生方も最高に喜べる瞬間だった。

 しかし、3年目、4年目となると、行き詰まり感を感じるようになってきた。まだまだ試したいことはたくさんあったが、「本当にこれが子どもたちの成長につながっているのか?」「本当は、この子たちの人格形成にとってもっと望ましい音楽への関わり方があるのではないか?」という疑問を抱えるようになった。行事などで音楽の授業が圧迫され、どうしても「やらせている」感覚に陥ってしまうことも苦痛であり、悩みだった。

 悩んだ末、もともと希望していた中学校へ異動することになった。担任を持った上に、全学年17クラスの音楽を担当した。毎日5~6時間の音楽の授業に、合唱部の顧問としての放課後の指導、コンクール等で指揮をすることもあった。合唱コンクールの練習では全クラスを駆け回り、中学生の力強い歌声に全身が震え、本番では感極まり舞台裏でひっそりと涙した。

 そうしているうちに、自分の持っている知識や体力がどんどんすり減っていくのが分かった。ただただ一生懸命で、自分自身が音楽を楽しむ余裕や、新しい音楽や知識・技能を取り入れようとする時間も、気力すらもなくなってしまったのだ。

 そして、時に厳しさが求められる教育的指導と並行しながら、音楽の楽しさを伝えるという難しさ。ここで、特別支援学校でも感じた感覚と同じ壁に、私は再びぶち当たったのだった。

「“私”が、音楽の素晴らしさを最大限に伝え共有する方法は、音楽教育ではないのではないか?」。なんとこれが、音楽科教師として6年間全力疾走した末に辿りついた答えだった。

 退職、結婚を経て、自分自身の人生のナラティブを噛みしめる中で、ナラティブ音楽療法に出会った。また、発達障害児のための放課後等デイサービスに勤務し、有難いことに音楽の活動を取り入れる機会をいただいた。「先生」としてではなく、対等の人間同士として音楽を楽しむ時間は笑顔に満ち溢れていて、心底幸せだと感じた。

 そして、対象となる方々と音楽との出会いや繋がりを、「指導」や「教育」といったことではなく、私らしい笑顔と愛情で提供しサポートし続けていくことが、私自身の幸せな音楽との関わり方でもあると確信することができた。

 これから音楽療法士として活動していくにあたっては、今までの経験をふまえ生かしつつも、心機一転、新たな気持ちで臨みたいと思っている。

 まずなによりも、対象者の方々と音楽への愛情をもって毎回のセッションを行うこと。参加者の方一人ひとりとお会いでき、一緒に音楽を楽しめる喜びや嬉しい気持ちを、笑顔や会話、そして音楽で伝えられるような音楽療法士になりたいと思っている。

 セッションが終わった時に、「あなたと出会えてよかった」「次も楽しみ」という気持ちを、自分も含め、その場にいる皆さんが持てることが理想である。これからは子どもだけでなく大人や高齢者の方とも向き合い、一人ひとりの人生の物語に共感・共有し寄り添うこと、一緒に笑い、楽しみ、教えていただくという姿勢を持つことを大切にしていきたい。

 そして音楽療法のプロとして、セッションが心や体に作用し、それぞれの症状を少しでも緩和・改善し、生活が明るく豊かになっていくことを目指したい。そのために、音楽療法士としてのより専門的な知識や技能をしっかりと身につけ、いつまでも向上心とワクワクを忘れず、毎回のセッションで最善を尽くせるように頑張っていきたいと考えている。

 私と音楽との真の交流は、まだまだ始まったばかりである。

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